ここは、こうべの おうじ動物園です。いつも、５がつの おわりごろに なると、かわいい あしかの 赤ちゃんが うまれます。まさるくんも ここで
うまれました。
プフープフープフー
はなを 大きく ひらいて、げんきに およいでいます。
あしかは さかなが 大好きです。しいくの おじさんが なげると、すいすい およいできて 食べます。
あれっ、まさるくんだけが さかなを たべません。すぐ、りくに あがって おかあさんに おちちを ねだっています。
まさるくんは うまれてから もう ９かげつも たつのに、いつまでも あまえんぼうなのです。
『だめよ！おさかなを たべなきゃ。』おかあさあんは、きょうも まさるくんを しかっています。
つぎのひ。あしかいけの まわりで、こどもたちが しんぱいそうに みていました。まさるくんの ようすが どうも おかしいのです。おかあさんが おちちを のませなかったからです。
しんぱいに なった おとこのこが、しいくの おじさんの ところへ しらせに はしりました。「おじさん！まさるくん、げんきが ないよ！」
しいくの おじさんは あしかいけに いそぎました。「これは いかん！」
ぐったりしている まさるくんを みると、すぐに だきかかえ、どうぶつびょういんに はこびました。となりの チンパンジーや、おおかみも しんぱいそうに みていました。
よわっている まさるくんを もうふに くるみ、あたためました。ゴムの くだでくすりと ミルクも のませました。おじさんたちは まさるくんが たすかるようにと、いのっていました。
よるも ずっと こうたいで かんびょうしました。
そして、ふつかめの あさです。
「しーっ、まさるくんが こえを だしたよ！」
「うん、ほんとだ。」
おなかが すいたのでしょう。まさるくんが、オウ オウ オウ、ちいさな こえで なきだしたのです。
「あっ、うんこも しているぞっ。」
「もう だいじょうぶだ。」
おじさんたちは ほっと しました。
まさるくんは だんだん げんきに なりました。
「そろそろ さかなを たべさせよう。」
おじさんたちは そうだんして、おかあさんも たべている さかなを やりました。でも、まさるくんは すぐに はきだします。おじさんたちは こまってしまいました。
おじさんたちは かんがえました。まいにち まいにち、さかなを くちに くわえ、たべる まねを したのです。そして、あるひ、「あっ、まさるくんが さかなを たべた。」みんな、おおよろこびです。
まさるくんは もう ひとりで さかなを たべることが できるようになりました。ちいさな プールで およいだり、おじさんと かけっこしたり、とても げんきに なりました。
そこで、おじさんたちは、まさるくんを あしかいけに もどしてやることに しました。
おてんきの いい あさでした。３かげつぶりに もどってきた まさるくんは なかなか おりから でようと しません。そっと かおを だしては すぐに ひっこめてしまいます。
「まさる！がんばれ！」
おじさんが こえを かけると、やっと あしを ふみだしました。
「あっ、まさるが でたぞ！」
ゆうきを だした まさるくんは、だれかに はしりよりました。
それは おかあさんだったのです。
『まさる、げんきだったかい。』
おかあさんは "チュー” と まさるくんに キスを しました。しかし、おかあさんは すぐに まさるくんから はなれました。
もうすぐ あかちゃんが うまれるからです。
『もう おにいちゃんに なるんだからね。』
と、いったのでしょう。
クウ クウ クウ。かなしそうな まさるくんは ザブーンと プールに とびこみました。こんどは どこへ いくのでしょう。
「あっ、まさるくんが おとうさんの せなかに のせてもらってる。」
「よかった よかった。」
おじさんたちは おもわず パチ パチ パチ、てを たたきました。
おとうさんは まさるくんを のせて、すいー すいー、およいでやりました。おかあさんの ３ばいも ある おとうさんに のった まさるくんは、ほんとうに とくいそうです。
そして、６がつの あるひ。まさるくんは あさから すの なかばかりを のぞいていました。
『あっ、あかちゃんが いる。』
あかちゃんあしかは、おかあさんの おちちを いっしょうけんめい のんでいました。
まさるくんは きゅうに おにいちゃんの かおに なりました。
「まさるくん、げんきになって よかったね。」
まさるくんの びょうきを しらせてくれた おとこのこが おとうさんに いいました。
まさるくんは おとうさんに ついて、すいすい およぎ、からだも ぐんぐん おおきくなりました。
そして よるは、まさるくんの おかあさんと いちばん なかよしの おばさんと いっしょに ねむります。
