社会福祉の発展
<イギリス>
エリザベス救貧法(1601年)
労働能力の有無により、有能貧民、無能力貧民、児童の3種に区分
教区単位で救貧税の徴収
新救貧法(1834年)
マルサスの「人口論」の影響から法制化された
・全国均一(中央集権化)
・ワークハウス収容
・劣等処遇の原則
※慈善組織協会(C.O.S.)・・・1869年 ロンドンに設立された
友愛運動は、チャルマーズの「隣友運動」に端を発する
無秩序に行われていた民間慈善活動を調整し・組織化
貧困調査
ロンドン調査(ブース)
ヨーク調査(ラウントリー)
※市民の約3割が貧困状態にあることを示した
世界初のセツルメント
・・・トインビーホール(ロンドン) バーネット夫妻
ベヴァリッジ報告(1942年)
・・・:「ゆりかごから墓場まで」の福祉国家の誕生
シーボーム報告(1968年)
・・・地方自治体および統一的社会サービス
グリフィス報告(1988年)
・・・コミュニティ・ケアとケアマネジメントの必要性
<アメリカ>
セツルメント活動
1886年 ネーバーフッド・ギルド(ニューヨーク) コイト
1889年 ハル・ハウス(シカゴ) J.アダムス
ケースワーク論の確立
リッチモンド(ケースワークの母):『社会診断』
社会保障法(1935年制定)
ニューディール政策(ルーズベルト大統領)の一環として
「社会保障」という言葉を世界で最初に用いた法律
<スウェーデン>
1992年 エーデル改革:医療と福祉の統合を図り行政責任をコミューンに移行
<ドイツ>
ビスマルク 「飴と鞭」 1994年「介護保険法」成立
日本の社会福祉の歴史
(1)社会事業成立以前(~1920年)
1874(M7)年 恤救規則・・・無告の窮民のみを公が救済する法
私的慈善事業
石井十次 ・・・岡山孤児院 創設
石井亮一 ・・・滝乃川学園創設(日本で始めての知的障害児施設)
片山 潜 ・・・キングスレー館 創設
山室軍平 ・・・救世軍
留岡幸助 ・・・家庭学校(不良少年感化のため日本初)
横山源之助 ・・・『日本之下層社会』を執筆
野口幽香 ・・・二葉幼稚園(貧児を対象) 創立
1908年 中央慈善協会 初代会長 渋沢栄一
1917年 済世顧問制度 笠井信一(岡山)
1918年 方面委員制度 林 市蔵、小河滋次郎(大阪)
(2)社会事業成立期(1920~1945年)
1929(S4)年 救護法(生活、医療、助産、生業扶助+埋葬費)
河上 肇 ・・・『貧乏物語』
長谷川良信・・・マハヤナ学園
大林宗嗣 ・・・『セツルメントの研究』
1927(S2)年 健康保険法
1933(S8)年 児童虐待防止法 → 児童福祉法(S22)に吸収
1946(S21)年 民生委員法
三浦文夫 ・・・貨幣ニーズと非貨幣ニーズに区分し
「社会福祉経営論」を主張
日本の社会福祉の歴史
(3)戦後の社会福祉(1945年~)
第2次世界大戦後、GHQ指導下での社会福祉行政改革
1946年 GHQ「社会救済に関する覚書」
・・・無差別平等、公私分離、国家責任、最低生活の保障
<福祉三法>
~S20年代は、貨幣ニーズに対して生活保護が中心となった
(救貧に重点)
・生活保護法 1946(S21)年
(新生活保護法・・・1950(S25)年)
・児童福祉法 1947(S22)年 ←浮浪児、孤児対策
・身体障害者福祉法 1949(S24)年 ←戦争による身体障害者対策
※福祉三法の実施整備を目標として1951(S26)年社会福祉事業法
<福祉六法>
~S30年代においても、貨幣ニーズへの対応は
福祉政策の中心だった (防貧に重点)
・知的障害者福祉法 1960(S35)年 ←旧「精神薄弱者福祉法」
・老人福祉法 1963(S38)年
・母子福祉法 1964(S39)年
→1981年「母子及び寡婦福祉法」に改称
※国民皆年金、国民皆保険 ~ S36年に実施
S40年代後半から「認知症老人」問題がクローズアップされ始めた
S50年代は、高齢化に伴う、自宅の要援護老人への
介護サービスに対するニーズが増大
1982(S57)年 老人保健法
S60年代半ば以降は、多元的なサービス供給体制が求められた
ボランティア活動、非営利団体による福祉サービスなど
<社会福祉関係八法改正>~1990(H2)年
1989(H元)年 ゴールドプラン策定を受けて、改正
・施設への入所決定の事務が、都道府県から市町村へ移譲
・在宅サービスと施設サービスの一元化
<社会福祉基礎構造改革>~1998(H10)年
地域福祉の推進が大きな柱となった
2000年 社会福祉事業法等の一部改正→「社会福祉法」
・福祉サービスの利用制度化
・利用者保護の制度創設
社会福祉法(2000年6月 社会福祉事業法改正)
(社会福祉を目的とする事業の全分野における共通的事項)
<改正のポイント>
(1)利用者の立場に立った社会福祉制度の構築
・措置 → 利用制度へ
・地域福祉権利擁護制度の導入
・苦情解決のために、都道府県社会福祉協議会に
「運営適正化委員会」が設置
(2)サービスの質の向上
・福祉専門職の教育内容の見直し
・事業者自らによるサービスの質の自己評価実施
・社会福祉法人に対する財務諸表等の開示を義務付けた
(3)社会福祉事業の充実と活性化
・社会福祉事業の増加
福祉サービス利用援助偉業
身体障害者相談支援事業
知的障害者相談支援事業
障害児相談支援事業
身体障害者生活訓練等事業
手話通訳事業
盲導犬訓練事業
知的障害者デイサービス事業 など
・社会福祉法人の設立要件の緩和
・社会福祉法人の運営の弾力化
・多様な事業主体の参入促進
(4)地域福祉の推進を図る
・地域福祉計画の策定
市町村地域福祉計画、都道府県地域福祉支援計画の策定の努力義務
・社会福祉協議会、共同募金、民生委員、児童委員の活性化
【社会福祉法】
第1条 (目的)
第2条 (定義) 「社会福祉事業(第1種・第2種)」とは・・・
第3条 (福祉サービスの基本的理念)
福祉サービスは、個人の尊厳の保持を旨とし、
その内容は、福祉サービスの利用者が心身ともに
健やかに育成され、又はその有する能力に応じ
自立した日常生活を営むことができるように支援するもの
として、良質かつ適切なものでなければならない。
《個人の尊厳の保持と良質かつ適切なものでなければならないと規定されている》
第4条 (地域福祉の推進)
第5条 (福祉サービスの提供の原則)
※社会福祉に関する活動を行う者は、
地域福祉の推進に努めなければならない、と規定
社会福祉の運営組織
(1)第1種社会福祉事業・・・施設系
経営主体:国、地方公共団体、社会福祉法人に限定し、
その他の者は、都道府県知事の 許可 を必要とする
(2)第2種社会福祉事業・・・在宅系
経営主体の制限はない
事業開始後1ヶ月以内に都道府県知事に届出が必要
(3)社会福祉協議会
地域福祉推進の中心的な担い手として明確に位置づけられた
すべての市町村に設置されている(99%が社会福祉法人)
福祉活動に関する調査、企画、連絡・調整に携わる
・福祉活動専門員(市町村社会福祉協議会)
・福祉活動指導員(都道府県社会福祉協議会)
※福祉サービス利用援助事業
(実施主体:都道府県社会福祉協議会)
(2003年4月からは、
指定都市社会福祉協議会も実施主体として追加)
(4)福祉事務所
都道府県及び市(特別区を含む)は設置義務
町村は任意設置
原則として、
所の長、指導監督を行う所員(査察指導員)、
現業を行う所員、事務を行う所員を置かなければならない。
(査察指導員・現業を行う所員は、社会福祉主事でなければならない)
※所員の定数は条例で定める
(5)社会福祉法人
設立認可等の権限は都道府県知事
理事3名以上、監事1名以上を置かなければならない(任期:2年)
※社会福祉法人の合併は、
理事の2/3以上の同意および評議委員会の議決による
「公益事業(非課税)」と「収益事業(課税)」
※社会福祉法人の数は年々増加しており、老人福祉施設が最も多い。
社会福祉の財政と費用負担
(1)公費
国・地方公共団体が法令に基づいて支給する、措置費、
支援費、施設運営費国庫補助金、地方交付税交付金など
(2)民間資金
・共同募金(社会福祉法:第1種社会福祉事業)
都道府県の区域を単位として、毎年1回、厚生労働大臣の定める期間内、
都道府県共同募金会が、あらかじめ都道府県社会福祉協議会の意見を聞き
及び配分委員会の承認の得て、目標額、受配者の範囲、配分方法などを
定め公告しなければならない。
国及び地方公共団体は、寄付金の配分について干渉してはならない。
2000年の改正で、過半数配分原則を削除した
大規模災害に備えて「準備金」を積み立てる事ができる
(3)措置費の負担配分
・生活保護の保護費負担
国:3/4 実際に措置を行う実施主体:1/4
・養護老人ホーム・・・国:1/2 地方自治体:1/2
・軽費老人ホーム・・・国:1/3 都道府県等:2/3
・救護施設・・・国:3/4 都道府県:1/4
・認可保育園・・・国:1/2 都道府県:1/4 市町村:1/4
社会保障制度
:所得保障・医療保障・介護保障に分類できる
わが国の社会保険による給付は、世帯単位である
(1)所得保障制度 (概ね、4人で1人を支えている)
年金 国民年金
厚生年金
国家公務員共済年金
地方公務員等共済年金
私立学校教職員共済制度
(2)国民年金 (1961(S36)年・・・国民皆年金が実現)
・老齢基礎年金
25年間の資格期間を満たした人に、原則65歳以後支給
・障害基礎年金
資格要件を満たした、1級・2級の障害に該当する人に支給
(国民年金法に定める1級・2級の身体または精神障害者が対象)
・・・年金額は定額
・遺族基礎年金
資格要件を満たした寡婦または子に支給
A:被保険者
a.第1号被保険者…20歳以上60歳未満の自営業の非被用者(32%)
b.第2号被保険者…厚生年金保険の被保険者、共済組合の組合員、
私立学校教職員共済制度の加入者(52%)
c.第3号被保険者…第2号被保険者の被扶養配偶者で20歳以上60歳未満の者(16%)
B:保険料(2006年度:13860円/月)
被保険者の総数に応じて頭割りの均一拠出
国庫負担:1/3 2009年度までに1/2に引き上げる
※保険料の多段階免除制度
(全額、3/4、1/2、1/4 額の免除の4段階となる)
C:給付種類
老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金
寡婦年金、死亡一時金、付加年金
D:支給要件
資格期間が25年以上あるものが65歳に達したとき、支給。
(資格期間:保険料納付期間、保険料免除期間、合算対象期間)
E:支給開始年齢
原則として65歳 (繰上げ、繰下げ支給あり)
※基礎年金制度の確立は、1985年の改正により
女性の年金権が確立、二階建て制度の確立
(3)厚生年金
・老齢基礎年金
基礎老齢年金の受給権を得た時点から支給される
基礎年金に上乗せして、報酬比例の給付支給(二階建ての年金制度)
・障害厚生年金
障害3級でも支給される
・遺族厚生年金
遺族基礎年金受給者に加え、子のない妻、夫、父母、孫、祖父母も対象
(2007年から30歳未満の子のない妻は、5年間で受給権を喪失する)
(3)共済年金
基礎年金に厚生年金相当分と職域年金相当分とからなる
三階建ての年金
(4)国民年金基金
加入は第1号被保険者のみ、任意加入・・・年々加入者は増加している
※2004年の年金制度改正
・基礎年金国庫負担割合を2009年までに1/3から1/2へ引上げ
・2004年10月から毎年0.354%引上げ、2017年度に18.3%として固定化
・マクロ経済スライド方式導入
・厚生年金の標準年金額は現役世代の平均賃金の50%を下限
・在職老齢年金制度の見直し
・離婚の際の厚生年金の分割制度の導入
・遺族年金制度の見直し
・障害年金の改善
・短期間労働者への厚生年金適用拡大
・少なくとも5年ごとの財政検証の実施