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むかし ある ところ に、 とても こころ の やさしい
おじいさん と、 おばあさん が いました。
ある 日 の こと です。
「ばあさん や、 ちょっくら 山 へ いって、
しば を かって くる よ。」
おじいさん は そう いって、 いえ の
うら に ある 山 へ、 でかけて
いきました。
おじいさん が しば を かって いる と、
「デンガショツ、 デンガショツ。」
むこう の 林(はやし) の なか から、 おかしな
こえ が きこえて きました。
「はて? なん じゃろう。 みょうな
こえ じゃ な。」
おじいさん は ふしぎに おもい ながら、
そっと しげみ を わけて、 林 の なか へ
はいって いきました。
すると、 小さな(ちいさな) あきち に、
まるい どひょう を つくって、
やせた ねずみ と ふとった ねずみ が
すもう を とって いました。
「ほほう、 これ は おもしろい。」
おじいさん は、 木 の かげ に かくれて、
ぐっと め を こらしました。
やせた ねすみ は、 おじいさん の
いえ の ねずみ です。
ふとった ねずみ は、 村(むら) の
ちょうじゃ の いえ の ねずみ です。
「おら とこ の ねずみ や。 それっ、
がんばれ。 がんばれ。」
おじいさん は、 いっしょうけんめい
おうえん を しました。
けれども、 おじいさん の いえ の ねずみ は、
力(ちから) が よわくて、 どうにも なりません。
なんど やって も、 スポン スッポン と、
なげとばされて しまいます。
おじいさん は、 じぶん の いえ の やせた
ねずみ が かわいそうに なりました。
いえ に かえって くる と、 おじいさん は おばあさん に
ねずみ の はなし を しました。
「かわいそうで な。 わし は、 なみだ が でた わ。 いくら
かかって いって も、 スポン スッポン なげられて、
どろ だらけ に なって な。 力 が でる ように
して やり たい が、 うち は びんぼう で
おいしい たべもの など ない し な。」
おじいさん は、 ふうっ と いき を
はきました。
すると おばあさん が、
「それでは、 おもち を ついて、 だべさせて やりましょう。」
と、 いいました。
そこで ふたり は、 お正月(おしょうがつ) の ため に だいじに
しまって ある おこめ を たいて、 おもち を
つきました。
「さあ、 ここ に おいて
おく よ。 たくさん たべて な、
力 を つける ん だ よ。」
おじいさん と おばあさん は、
おもち を だんご に まるめて、
ねずみ が よく かお を だす
たな の 上 に おきました。
つぎ の 日 の あさ、 おもち は ぜんぶ なくなって いました。
「よし、 よし。 これで、 うんと 力 が ついた だろう。」
おじいさん は よろこび ながら、 また 山 へ でかけて
いきました。 そして、 しば を かって いる と、
「デンカショッ、 デンカショッ。」
きのう と おなじ ように、 ねずみ たち の
かけごえ が きこえて きました。
「おう、 おう。 やっとる。 やっとる。」
おじいさん は、 にこにこ 林(はやし) の
なか へ はいって いきました。
「ヨイトサノ ヤーエ。」
ちょうじゃ の いえ の
ふとった ねずみ が、 あし を
あげて、 しこ を ふみました。
「ヨイトサノ ヤーエ。」
おじいさん の いえ の
ねずみ も、 まけ ず に 力 いっぱい
しこ を ふみました。
「はっきょい、 のこった。」
二 ひき の ねずみ は、 がっちり くみあいました が、
すぐに スポン。 ちょうじゃ の いえ の ねずみ が、
なげとばされて しまいました。
「よし。 もう いっちょう だ!」
なんど やって も、 おなじ です。
なげとばされる の は、 ふとった
ちょうじゃ の いえ の ねずみ です。
「おかしい な。 おめえ、 どうして きゅうに
つよく なった ん だ?」
ちょうじゃ の いえ の ねずみ が、 くび を
かしげ ながら いいました。
「おらぁ、 ゆんべ うんと もち くった から、 つよく なった ん じゃ。」
おじいさん の いえ の ねずみ は、 もりあがった うで を
じまん そうに みせ ながら、 いいました。
「いい なあ。 おら とこ の いえ は、 かねもち でも
けちんぼ で、 もち なんか つか ぬ。 こんや おめえ の
いえ いく から よ。 おら に も もち くわせて くれ ろ。」
ちょうじゃ の いえ の ねずみ が、 いいました。
「おら の いえ は びんぼう だ から、 おまえ が
たくさん おかね を もって きたら な。」
「もって いく。 もって いく。 おかね なら、
いくら でも ある からーー」
「そん だら、 ぜんぶ おこめ を
たいて、 二 ひき に いっぱい
もち を たべさせて やりましょう。
お正月 は まだ
さき の こと。 どうにか
なりますよ。」
そこで また おもち を
ついて、 たな の 上 に おきました。
やさしい おばあさん は、
二 ひき の ねずみ の ため に、
赤い(あかい) ふんどし を 二 本(にほん)
つくって、 おもち の わき に
おきました。
あさ おきる と、 おもち も ふんどし も、 なくなって いました。
「ばあさん や、 ゆんべ は ちょうじゃどん の いえ の ねずみ が、
きた ようじゃ な。
さて、 きょう は どっち が かつ かな。 たのしみ じゃ。」
おじいさん は、 わくわく し ながら、 山 へ
でかけよう と しました。
すると、 いえ の すみ に、
小ばん(こばん) が 三 まい おいて ありました。
「ばあさん や、 ばあさん や。 ちょうじゃ どん の
いえ の ねずみ は、 ほんと に おたから を もって
きた よ。」
おじいさん は びっくりして、 おばあさん を よびました。
おじいさん は、 おばあさん を つれて、
山 へ でかけて いきました。
ふたり で しば を かって いる と、
「デンカショッ、 デンカショッ。」
いつも より、 げんき な こえ が
きこえて きました。
「それ、 それ、 はじまった。 はじまった。
さあ、 み に いこうーー」
おじいさん は、 おばあさん の 手 を ひいて、
林 の なか へ はいって いきました。
赤い ふんどし を しめた かわいらしい ねずみ が 二 ひき、
くんだり はなれたり して、 すもう を とって います。
けれども、 どちらも つよく て、 なんど
とって も、 しょうぶ は つきません。
おじいさん と おばあさん は、
たのし そうに ゆうがた まで ねずみ の
すもう を みて いました。
それ から と いう もの、 おじいさん と
おばあさん は、 ちょうじゃ の いえ の ねずみ が
もって きた お金 で、 いつまでも しあわせに くらしました と さ。
ーー「ねずみ の すもう」 の おはなし、 これ で おしまい。
むかし、むかし、ある山奥におじいさんとおばあさんが住んでいました。
とても貧しかったので、二人は、めったに町に買い物に行くこともありませんでしたし、お風呂に入ることも月に一回でした。
おじいさんは小さな畑で働き、おばあさんは家で針仕事をしていました。
ある日、おじいさんが焚き木を集めに山に行くと、何か聞きなれない音がするので、木の陰からのぞいて見ると、二匹のねずみが相撲の稽古をしているではありませんか。
小さなねずみは、いつも大きなねずみに土俵の外に投げ出されていました。小さなねずみをよく見てみると、何と、それはおじいさんの家に住んでいるねずみでした。
家に帰ると、おじいさんは見たことをおばあさんに話すと、
「まあ、ねずみが相撲をしてたんかい。」とおばあさん。
「おばあさん、大きいねずみは長者さんちので、小さいねずみはうちのじゃ。」
「おじいさん、小さいねずみがかわいそうじゃの。餅をこしらえて食べさせましょう。」
「それがいい。」
おばあさんは、正月用のもち米を洗って、蒸して、臼の中に入れ、おじいさんが、木ねでもちをつき、おばあさんがもちを手ですばやくひっくり返しました。
それがすむと、おばあさんはもちを手ごろな大きさに千切り、おぼんに並べて、棚にのせました。
「さあ、小ねずみ。好きなだけもちを食べて、大ねずみを負かしておくれ。」とおばあさん。
その晩、さっそく小ねずみは棚のもちを見つけ食べました。
「うまいな。こんなにおいしいもの食べたことないな。」と小ねずみは言うと、次から次へと食べて、とうとう全部食べてしまいました。
次の日、おじいさんは、ねずみの相撲を見に山に出かけました。
一回戦、大ねずみ、「押し出し」の勝ち。
二回戦、小ねずみ、「投げ落し」の勝ち。
三回戦、大ねずみ、「つり出し」の勝ち。
四回戦、小ねずみ、「押し出し」の勝ち。
おじいさんは、とても満足そうでした。
ねずみは、何回も稽古して疲れて、木の下に座り込みました。
「小ねずみ君、たった一日で、どうやってそんなに強くなったんだい。」と大ねずみ。
「おじいさんとおばあさんがこしらえてくれたもちを食べたんだ。」と小ねずみ。
「僕も、そのもちを食べないなあ。君の家に行っていいかい。」
「うちは、とても貧乏なんだ。お金を持ってきたら、食べられるよ。」
おばあさんは、おじいさんが帰って来ると、さっそくたずねました。
「今日のすもうはどうでした。」
「いい取り組みだったよ。小ねずみはと大ねずみと互角に戦った。」
「こしらえたもちが役にたってよかったの。」
「ところで、大ねずみもおばあさんのもちが食べたいそうじゃ。今日ももちをこしらえてくれないかの。」
「お正月にもちが食べられなくなるけれど、いいですよね。」
その晩、大ねずみが大きな袋を担いでやってきました。
「これが、おじいさんとおばあさんがこしらえたもちなんだ。さあ、食べて。」
「実にうまい。こんなおいしいもち初めてだ。」
大ねずみと小ねずみは、お腹一杯になるまで食べました。
おばあさんは、二匹のねずみに相撲の赤いまわしも作っておきました。
朝になると、棚の上にお金が一杯入った袋がのっていました。
おじいさんとおばあさんは、幸せな新年を迎え、町に買い物に出かけ、毎日お風呂に入りました。
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