俺は良い大学に入って、いい生活するより、いい友達見つける方がよっぽど大事だと思うんだ。
お涙ちょうだいの友情論ですか?くだらない。
おまえそうやってまわりをみくだしているとなあ、一生友達なんかできねえぞ。
学ぶべきものがない友達なら、いりませんね、そんなの。
まぁよ、俺に言わせりゃよ、おめえから教わることなんか何もねぇ。
何だって。
だって、お前の言ってることは全部教科書に書いてあんだからよ。毎日毎日、お前そんなもんばっか脳みそ詰め込んで楽しいか。毎日先のことばっかり考えて楽しいか。人間っていうのはよ、本当は今をもっと大切に生きなきゃまずいんじゃないのか。今日一日を大切に生きていくべきなんじゃないのか。お前、未来っていうのはそういうのの積み重ねなんだよ。だから、人生にリハーサルなんかねえんだよ。毎日が本番なんだ。今日一日を精一杯生きていくべきなんだよ。そうじゃなきゃお前、今の自分が可哀想だろ。
ちょっと、何してんですか、あなたたち。
ちょっとだけ待ってください。今大事なところなんです。
うちの息子どうしようって言うんですか。
もうすぐ終わりますから。
善人、大丈夫なの、ねえ。大丈夫。
俺よお、高校の頃ワルばっかやってたよ。ほとんど学校なんか行かなくて、あっという間に退学になっちまって、でも行けなくなって初めて分かったんだよな。学校って良いもんだって。友達は一杯いるし、面白いことも一杯あるし、この歳になって、ますます学校行きたくなっちまったよ。だから教師になったんだよ。だって、教師になれば、お前、死ぬまで学校いられるもんな。だから俺は今、すごく幸せなんだよ。お前にもそうなって欲しいんだよ。学校を好きになって欲しいんだよ。今を好きになって欲しいんだよ。俺みたいに後で気付いても遅いんだぞ、菊池。わぁ、やめだ。おお、いいぞ、もう、雨。な、もう、やめよう。
なんでよ鬼っち。もう少しだったのに。
そうだよ、菊池の奴、まじで感激してたじゃねえかよ。
このままだと、賭けも俺等の勝ちだぞ。
構わねえよ。
わりいな、菊池。実は賭けてたんだよ。