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京都のバトンを次の走者につなぐ。神戸はその一助を果たしたか。神戸で開かれた主要国(G8)環境相会合は、脱温暖化が最大のテーマとなる7月の北海道洞爺湖サミットに向け前進の芽を見いだしたようだ。二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出削減を先進国に求める京都議定書は、12年で期限が終わる。そのあとは、排出量が多いのに途上国扱いで義務のない国々を抑制・削減の仲間に呼び込めるかどうかがカギになる。
とくに米国と並ぶ二大CO2排出国の中国に視線が集まっている。この温暖化での南北問題で、もつれが解ける兆しが見えたのである。そうなったのは、なにより先進国の責任の重さを明言したことが大きい。議長総括は、世界の温室効果ガス排出を今後10~20年で減少に転じさせ、50年までに半減させるという道筋を示した。そのうえで先進国に国ごとの削減目標を掲げるよう促し、先頭に立って大幅に削減するよう求めた。
「50年までに半減」は、去年のG8サミットで「真剣に検討する」と申し合わせた世界目標だ。このゴールをめざすなら先進国が多めの負担を引き受けるのは当然だが、その姿勢をはっきり打ちだしたことは、途上国との話し合いの出発点になるだろう。
総括は途上国へも巧妙な変化球を投げた。成長が急な途上国に「排出量増大のスピードの抑制を目指すことが重要」と呼びかけたのである。先進国との間に線を引きつつ、ブレーキだけはかけてほしい、と求めたことで、いきなり削減義務を課されることへの疑心暗鬼が和らいだかもしれない。今回の会合には、経済成長の大きい国を中心に途上国も参加した。
これらの国々の間でも、脱温暖化の計画がすでにある国や目標を掲げようとしている国がふえつつある。成長途上の国にとって、脱温暖化は省エネルギーや公害防止につながるので、大きな利益になる。日本政府は「神戸イニシアチブ」の一つとして、脱温暖化とほかのねらいを同時に追求する「相乗便益」の技術支援を提唱した。このようなかたちで手をさしのべることは、途上国の歩み寄りを引き出す切り札になるだろう。
今回は、日本が呼びかけている「セクター別方式」も議論された。国ごとの目標づくりなどで、産業などの部門ごとに削減可能量を積み上げる方法だ。だが、可能量と削減必要量との落差をどう埋めるかが課題とされた。むしろこの手法は、途上国で省エネを進めるときに先進国の支援と組み合わせて活用できるかもしれない。先進国として説得力のある目標を掲げ、途上国を脱温暖化の動きに引き寄せられるか。サミット開催国の政府として力量が試されている。