その頃、僕は毎晩悪い夢に魘されていた。
一人の少女が巨大な悪魔のようにまがまがしい怪物と戦っているのだ・・・
僕は近くでそれを見ているのだが動くこともできず声も出せず、少女が魔物に痛めつけられるのをただ見ていることしかできないのだった・・・
そして少女が力つきようとしているところで僕は目が覚める。
夜明けのほの暗い部屋の中で僕はいいようのない悲しみにとらえられ、込み上げてくる涙を必死にこらえるのだった・・・
僕の名前はユーシス。 モタビアの首都パセオでエージェントとして働いている。 僕は頭を振り、頭から夢を追い出そうとした。
マザーブレインという巨大なメインコンピューターが世界を支配する現代において、夢などという曖昧なものにセンチメンタルになるなんてナンセンス以外のなにものでもない。
世の中のできごとはすべてデジタルなデータにおきかえられるものなのだから・・・
僕は窓を開け朝の空気を吸い込んだ。すがすがしい空気が体の中を通り抜け、夢にとらわれていた自分が洗い流されていくような気がした・・・