授業にはそれまではほとんど顔を出さなかった佐藤だったが、部活だけは一貫して熱心だった。郷土芸能部、民族舞踊部、中国舞踊部を掛け持ちし、太鼓や踊りは他のどの部員よりも練習を重ね、誰からも一目置かれていた。
「日本の伝統芸能では、皆が輪になって踊ったり、一つの太鼓を皆で回してたたいたりするのですが、中国舞踊では主役がセンターを張るのです。真ん中に行くには、人より努力するしかない。それが顧問の先生にも他の部員にも認められ、卒業までセンターは誰にも譲りませんでした。これが最初の成功体験となりました。ある分野でどれだけ自分がそのことに時間を使ったのか、努力したのか。結局、成長は足し算なのです」。
勉強では遅れをとったかもしれないが、自分の好きなことで一番になればいい。勝てる分野で勝つ。ここが佐藤の生き方の原点となった。