朝日新聞・1992年2月10日付より
「身近な外国人」というテーマを考えるとき、どうしたら外国人と日本人との間の文化摩擦を乗り越えられるか、という問題は避けられません。皮肉なことなのですが、日本人が文化の違いにこだわりすぎるため、外国人との関係がうまくいかなくなることが多いと思います。
例えば、アメリカの知り合いが、日本の子供たちと仲良くなることを期待して普通の幼稚園に子供を入れたものの、参観に行ったら自分の子供は他の子から離れて遊んでいるのを見て驚いたそうです。先生に尋ねると、「これがアメリカのやり方だと思った」と言われたそうです。
これはアメリカ文化の誤解に基づいていますが、その理解が正しくても、問題になることがあります。
アメリカでは名前を呼び捨てにするのが普通ですが、日本でもアメリカ人だからといって、呼び捨てにする日本人がいます。英語で話している場合はいいのですが、いつも日本語で話しているのに、周りの日本人と違って自分だけが呼び捨てにされていることを気にする人がいます。
また、母国でなら別ですが、日本で「ハロー」と言われることも、必ずしも気分の良いことではありません。逆に、「こんにちは」と声をかけられたり、ごく普通に話してもらったりすると、私はうれしく感じます。「外国人」より「人間」として接してもらっている気がするからです。