All Audio Requests Matching newspaper article

pineappleboom
654 Characters / 1 Recordings / 0 Comments
"世田谷のS子さん(三一)宅に、逗子に住む姑、F子さん(六一)が訪ねてきたのは、梅雨の晴れ間の昼のことだった。 「渋谷まで来たから、ちょっと孫の顔を見にね」 S子さんにとっては鬼より怖い姑である。精いっぱい愛想よくもてなした後、娘を連れて散歩にいってもらった。ホッと一息。気が緩んだせいか、空腹を覚えるS子さん、ふと、姑が近くの高級スーパー「Kノ国屋」で買ったというドーナツの袋に目が止まった。逗子の自家用といっていたから、 (これには手を出せないわね) と一度は思ったものの、空腹は理性より強し。袋を開けると、中には六個のドーナツ。 (一個だけなら分からないか) と、急いで食べると、パックの蓋を念入りに元に戻しておいた。そうとは知らめ姑は、散歩から戻ると、ドーナツの袋を提げて、満足げに帰っていった。 ところが、逗子に戻ったF子さん、しっかり、一個足りないのに気がついたから大変。 「天下のKノ国屋がこんなミスをするなんて!」 と、さっそくKノ国屋に延々三十分の抗議の電話。Kノ国屋の担当者も根負けした。翌朝一番に、八十円のドーナツ一個を後生大事に抱え、販売員と売り場の責任者がF子さん宅まで謝罪にきたのである。片道二時間余り。聞けば、販売員はそのため五時に家を出たという。 F子さんもこれには、 「さすがにKノ国屋だわー」 …"
pineappleboom
654 Characters / 1 Recordings / 0 Comments
"世田谷のS子さん(三一)宅に、逗子に住む姑、F子さん(六一)が訪ねてきたのは、梅雨の晴れ間の昼のことだった。 「渋谷まで来たから、ちょっと孫の顔を見にね」 S子さんにとっては鬼より怖い姑である。精いっぱい愛想よくもてなした後、娘を連れて散歩にいってもらった。ホッと一息。気が緩んだせいか、空腹を覚えるS子さん、ふと、姑が近くの高級スーパー「Kノ国屋」で買ったというドーナツの袋に目が止まった。逗子の自家用といっていたから、 (これには手を出せないわね) と一度は思ったものの、空腹は理性より強し。袋を開けると、中には六個のドーナツ。 (一個だけなら分からないか) と、急いで食べると、パックの蓋を念入りに元に戻しておいた。そうとは知らめ姑は、散歩から戻ると、ドーナツの袋を提げて、満足げに帰っていった。 ところが、逗子に戻ったF子さん、しっかり、一個足りないのに気がついたから大変。 「天下のKノ国屋がこんなミスをするなんて!」 と、さっそくKノ国屋に延々三十分の抗議の電話。Kノ国屋の担当者も根負けした。翌朝一番に、八十円のドーナツ一個を後生大事に抱え、販売員と売り場の責任者がF子さん宅まで謝罪にきたのである。片道二時間余り。聞けば、販売員はそのため五時に家を出たという。 F子さんもこれには、 「さすがにKノ国屋だわー」 …"