分類
因果的決定論(完全決定論)
因果的決定論とは、いかなる現象もそれ以前の現象の単なる結果であり、この原因と結果の関係は因果律に支配されているがゆえに未来は現在および過去に規定されて一意的であるとする考え方。量子力学以前の自然科学では広く支持されていた。
確率的決定論(確率論)
確率的決定論とは、未来は因果律によってではなく確率によって支配されており、その限りで未来は決定しているのだ、とする主張。
未来が確率的であるので、因果的決定論と同様に、自由意志の存在は原則的に否定されるのだ、と主張する人もいる。 つまり、「自分が選んだわけではない」ゆえに「自分の罪ではない」と結論する論法である。 (自由意志の項目の両立主義も参照可)。
論点
道徳と決定論/非決定論
しばしば、決定論は自由意志を否定するがゆえに道徳と両立しないと言われる。これは、かつては決定論者と非決定論者との最大の争点のひとつであったが、現在では過大評価とする傾向が強い。その理由として、
1. 誰かが道徳的に思考することあるいは自由意志があるかのように振舞うことも決定論によれば既に決定しており、これらの行為そのものの存在が否定さ れるわけではない。つまり、人が世界の解釈にではなくその現象にのみ着目するならば、決定論的世界と非決定論的世界とは同一でありえること
2. 道徳の根拠が必ずしも自由意志であるとは限らないことなどが挙げられている。
なお、哲学の領域では、カントが、純粋理性の力学的二律背反で、現象における必然性を、当為における自由による原因性と両立するものとして捉えている。
自然科学と決定論
近代科学においては、物理学者であり決定論者でもあったピエール=シモン・ラプラスは、もし宇宙の全ての原子の運動および位置が分かるならば未来は完全に予測できると主張した(ラプラスの悪魔)。
しかしその後、「宇宙の全ての原子の運動および位置が分かる」可能性は、現在ではハイゼンベルクの不確定性原理によって否定された。このことは、量子力学の観測問題と直接的に関わってくる問題であるが、現在の量子力学の標準的な解釈であるコペンハーゲン解釈の登場により、決定論の証明は難しくなった。 しかし、アインシュタインは 「神はサイコロをふらない」と言い、自ら創設者の一人となったはずの量子力学の標準解釈を否定し、決定論を擁護しようとした。そしてアインシュタインは思 考実験「標準解釈のパラドックス」を提示することで反論しようとした。だが、実際に実験を行ってみると、それは現実に起きている現象であることがわかり、 彼のもくろみは失敗した。
ただし、スティーヴン・ホーキング を含む一部の物理学者は、決定論的であるとされることもある多世界解釈を支持しており、自然科学者の間でも見解は一致していない。