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学校から帰宅すると、妹がリビングで電話をしているところだった。
妹の名前は、高坂桐乃。現在十四歳。近所の中学校に通っている女子中学生だ。
ライトブラウンに染めた髪の毛、両耳にはピアス、長くのばした爪には艶やかにマニキュアを塗っている。すっぴんでも十分目を惹くだろう端正な顔を、入念なメイクでさらに磨き上げている。中学生には見えないくらい大人ぴた雰囲気。背がすらっと高く、しかし出るところはきっちり出ているー。
これで歌でも上手ければ、いかにも女受けしそうなカリスマアイドルのでき上がりだ。
身内の贔屓目なんかじゃない・俺の妹は、とにかく垢抜けているやつなのだ。
もっとも自慢の妹だと誇るつもりはぜんぜんない。男連中からはよく羨ましがられるし、連中の気持ちも分からんでもないが、俺としては冗談じゃないと言いたいね。
実際に妹がいるやつなら、ちょっとは俺の気持ちが分かってくれるんじゃないかと思う。
妹ってのは、そんなにいいもんじゃない。少なくとも俺にとっては。
例えばこう考えてみてくれ。学校のクラスには、たいてい幾つかの友達グループがあるよな。
その中でも一番華やかなグループを思い浮かべてみるんだ。運動部のエースやら、秀才のイケメンやら、特別かわいい女子なんかが中心になってる集団さ。
その集団の中でも、さらに一段、垢抜けている女子。
なんだか話しかけるのも躊躇しちまうような、今後もずっと関わることのないだろう、別世界の住人。