This is just a passage from one of my old textbooks. Please read at natural speed. Thank you!
企業型副業(平日は会社員、週末はオンライン店の店主)
副業と言えば「小遣い稼ぎ」や「趣味の延長」という印象があるが、パソコンを利用するデジタル世界の若い社員の副業は少し違う。できるだけ時間やコストを少なくしてオンラインの店などを営業する彼ら、会社での本業と目宅の副業の生活を、起業への準備期間と考えているのだ。
アメリカでMBAを取得した佐藤さん(仮名、31)は近いうちに念願の会社を始める予定だ。現在は外資系企業の営業の仕事をしているが、副業として個人で企業コンサルタントの仕事を始めてから五年になる。ベンチャー企業と年間契約を結び、週末と平日の深夜を利用して顧客とEメールで連絡を取っている。勤め先は本業と重ならなければ副業を認めているが、「報告しても得いはならない」と考えて知らせず、情報や人間関係のネットワークを広げる場として会社を活用している。
また、会社で事務の仕事をしている木村さん(仮名、32)は、「亀ちゃんの魚屋さん」というオンライン店で魚を販売している。デジタルカメラで撮影した魚をホームページに載せ、Eメールで注文を受け付ける。そして、地方で漁業を営む友人に注文し、その日にとれた魚を配達するシステムだ。中間企業を省いている分、輸送費を含めても通常より二、三割安い価格で販売できる。木村さんもやはりできるだけ早い独立を目指している。
加藤さん(仮名、30)は副業でコンピューターソフトのプログラムを作っている。管理職になって実際にモノを作る現場から離れた上、仕事が細かくなって本業の仕事からは達成感を得にくくなったと感じた。このままでは、技術者として満足が得られないと考えている。だからといって、本業をやめるとしばらくの間は収入の激減を覚悟しなければならないので家族を抱える者にとっては厳しい。企業に勤めていればとりあえず安心した収入があり、経営の方法を学びながら人脈も拡大できる。そんな事情もあって数年は今のままで続けるつもりだ。
近年不況が続き、リストラで企業が人員を削減したり、赤字で倒産する会社が出たことから、企業の終身雇用制度に対する信頼が以前ほど持てなくなっている。また、情報化のおかげで、店を持つとしてもオンラインなら自宅にパソコンさえあれば十分だ。実際に店を作る場合と比べると少ない資本で済む。そんな意識の変化と手軽さが背景にあるのだろう。身軽な若い会社員たちは意欲的に副業を持ち、いずれは起業を実現しようと努力している。
ところで、企業型副業が増えると社会にどんな影響を与えるのだろうか。専門家は経済を活性化するとみている。ベンチャー企業が活躍する米国では、アップルコンピューターなど副業から始まった有力企業が多い。教育や社会システムなどベンチャー企業を育てる体制があるからだ。一方、ほとんどの企業が副業を禁じている日本の場合は、副業から実際に起業家として独立するのは容易なことではない。
国の制度や個人の適正によって働き方は違うだろうが、この企業型副業のケースを見ると、情報化という時代の働きとともに働き方が変化していることがわかる。そして、自分の能力を生かして生き生きと働ける道を見つけようとするエネルギーは経済を動かす力にもなるのだ。