自然なスピードお願いします。
六丘衛さんの羊
むかしある高い岩山のふもとに六丘衛さんというおじいさんが住んでいました。六丘衛じいさんの家には可愛い十匹の羊がいました。毎日毎日六丘衛じいさんは羊たちのために山へ行っては青いおいしい草をたくさんとってきました。というのも、羊たちを山へはなすと、恐ろしい狼に食べられてしまうかも知れないからです。もうだいぶ前のことですが、白という羊が一匹で山へ行って、狼におそわれ、朝方まで勇敢に闘ったのですが、太陽が東の空に昇った時とうとう力つきて白い体を真赤にそめてたおれてしまったことがありました。羊たちが山へ行きたいと言いだすと、六丘衛じいさんはきまってこの話を聞かせて羊たちをなだめるのでした。
チビ、これはいま六丘衛さんにとって一番可愛い子羊でした。チビは勇ましく闘って死んだ白の話を聞くたびに若い血をわくわくさせました。
「山へ行きたいな。高いところには、あんなにおいしそうな草がたくさんあるし、山は自由で広々としている。」
ある日、六丘衛じいさんは羊小屋の高窓をしめ忘れてしまいました。チビは思い切って窓を飛び越え、山へ出かけました。山は広くて自由でした。じいさんの草よりもっと柔らかく、もっとおいしい草がたくさんありました。日が西に傾き、風が冷たくなってきたとき、チビはずっと高いところに登っていました。やがてとっぷりと日が暮れ、ふもとの方に六丘衛じいさんの家の灯が光っているのを見て寂しくてたまらなくなりました。そこでチビは「メエエ」と鳴いてみました。もうあたりはまっくら。とても山を降りることはできません。そう思った時、いつか六丘衛じいさんに聞いた狼のことを思い出し悲しくなってもう一度「メエエ」と鳴いてみました。そうして、チビは白のように勇敢に闘う決心をしました。冷たい風が「ウォーン」と狼の声を運んできました。狼が現れたとき、チビはさほど驚きませんでした。頭を低くさげ小さな角をふりかざして勇ましい闘いがはじまりました。チビは勇敢でした。夜っぴて闘いました。
やがて東の空が明るみ、星も六丘衛さんの灯も消え狼は去りました。チビの白い毛は真赤でした。太陽が登った時、チビは小さくかすんでいる六丘衛さんの家に向かって「メエエ」と鳴きました。そして力つきたチビは草の上にばったりたおれもう鳴き声を立てなくなっていました。
「六丘衛」は「六兵衛」の間違いですね?