Is there anyone who can help me to read 天声人語 for me?
東京の暁雨は早々に上がり、宵の空に山吹色の満月が浮かんだ。もはや氷輪の面影はなく、ほころんだ月光が高層ビルの林間にのぞく。おぼろ夜と呼ぶには早いが、巡る季節を思わせる絵である▼きょうは二十四節気の雨水(うすい)にあたる。「陽気地上に発し、雪氷とけて雨水となればなり」(暦便覧)。雪は雨に、氷は水となって土を潤す。深雪の地にも、草木が芽吹く候は兆していようか▼小林一茶は〈雪とけてくりくりしたる月夜かな〉と詠んだ。北信濃で生まれた一茶だからこそ、どこに暮らそうが、春が来る喜びを〈くりくり〉の感激で共有できたのだろう。この冬は日本海側などで豪雪を見た。雪解けを待ち望む心はひとしおだ▼獺祭(だっさい)なる季語がある。寒が緩み、生気に満ちた獺(かわうそ)。捕らえた魚をすぐには食べず、祭るように川岸に並べるという中国の伝承による。わがニホンカワウソは絶滅が言われるが、彼らが遊び場にした川も、ほどなく雪濁りの時を迎える。〈夢いくつ並べて消えて獺祭(おそまつり)〉齋藤翠▼遠いのが政治の春である。小沢一郎氏は「菅おろし」で腹を括(くく)ったとみえ、氏を慕う議員が脱党へと動き始めた。政権交代の岸に並べた夢は片端から消え、民主党そのものが絶滅、いや自壊の途にあるかに見える▼いよいよ改革に踏み込むかという時に、またぞろ政局祭りだ。国の針路を争うならまだしも、私怨(しえん)のたぐいだから情けない。ひと雨ごとに春暖が近づけば、ひともめごとに希望が遠のく。予告編ばかりの政治を見せられているうちに、はて何度目の春本番だろう。