-それではもうひとつ今、音楽業界の中で旬なワードとして「ハイレゾ」があります。今年の3月に過去作である6枚のアルバムをハイレゾでリリースしましたが、ハイレゾについてはどう思いますか?
音質を求めるとういうのは日本人の性質上すごく重要なものだと思うし、ヨーロッパの配信サイトで一番高音質なものをダウンロードしているのは日本人だというデータもあるくらい、日本人には求められているものなのかなと思うけど、僕は音質を求める時に「データ量が多いから良い音」じゃなくて「自分の好きな音が良い音」と思っていて、それはカセットテープかもしれないし、MDかもしれない。「あなたが好きな音ってどんな音?」っていうことをこの機会に再提示する必要があるんじゃないかなと。
-ハイレゾとアナログレコードの同時期リリースにはそういった狙いもあったと?
そういうことです。本当はカセットテープでも出したいんですけど。ベルギーに行った時、ベルギーのレコード店って殆どカセットテープテープなんです。それって自然な流れだと思っていて、テープって劣化するんですよ。摩耗して、経年劣化するからその「尊さ」みたいなものってこれからの時代は重要だなって気がしていて。そういうことに気付くためにもハイレゾというものは存在すべきものだと思います。
-最後に、Spincoasterで紹介しているバンドや読者の中には、日本の音楽の未来を担うかもしれないような、若いアーティストがたくさんいます。彼らに期待していることや、何か伝えられることがあれば。
伝えるなんて、おこがましいですけど……。最近びっくりしたことがあって。フェスの会場で若いバンドの子たちに「どんな音楽を聴いてバンド始めたの?」って聞くと「フェスでなんとかを見て、」とか日本のバンドを聞いて音楽を始めたって言う子が多いんですね。僕らの世代は洋楽を聞いて始めた人たちが多かったんですよ。そこに自分たちとの大きな差を感じてしまって。フェスが与える影響の大きさを痛感しました。全部が純日本製になってくるのは、それはそれで面白いのかもしれないですけど、リスナーが求めるものがよりシビアになってくると思うんです。同じようなものの中の些細な差異が変化になってくるので、それ以外のものをどう聴いたらいいか分からなくなると思うんです。
フェスに対応する「浴びる音楽」をつくろうとするんじゃなくて、自分が好きだと思う音楽を見つける作業、音楽の探し方みたいなものを研究して音楽をつくっていく方が、これからの時代を生き残って行けるような気がするし、僕もそういう音楽を探しています。