1. 禪師いはく、然らばたん気は生れ附ではござらぬ。何とぞしたときの縁に依て、ひよつとそなたが出かすわひの。何した時も、我でかさぬに、どこにたんきが有るものぞ。そなたが身の贔負故に、むかふのものにとりあふて、我がおもわくを立たがつて、そなたが出かして置て、それを生れつきといふは、なんだいを親にいひかくる大不孝の人といふもので御座るわひの。人々皆親のうみ附てたもつたは、佛心ひとつで、よのものはひとつもうみ附はしませぬわひの。しかるに一切迷ひは我身のひいきゆへに、我出かしてそれを生まれつきと思ふは、おろかな事で御座るわひの。我でかさぬに短気がどこにあらふぞいの。