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しょうぶとあやめ
まぶしいような新緑の五月。青空を背景に誰しも思いうかべるのが、鯉のぼり、そしてしょうぶとあやめ。
端午[たんご]の節句としょうぶとは、最初から深いつながりがありました。
端午の節句のいろいろな行事は、災難ゃ病気がよりつかないようにという目的ではじめられたようです。
しょうぶは、ご存じのように非常に強い香りをもっています。昔から、中国や日本で五月五日にしょうぶ酒をつくったり、しょぅぶ湯にはいったり、あるいはその剣のような葉を門の上にかけたり軒にさしたりするのは、このしょうぶの強い香りが邪気や病魔を追いはらう力をもっていると信じられていたからです。
枕の下にしょうぶをしいたり、かつらにして頭にかぶったりしたのも同じことです。錦の袋や美しい糸で香料をつつんだ薬玉[くすだま]も、もとはしょうぶやよもぎをたばねたものからはじまったといわれます。
この端午の節句と関係の深いしょうぶは、花は美しくありません。花の美しいのは、はなしょうぶですが、じつはしょぅぶが、さといも科の植物であるのに対して、はなしょうぶはあやめ科に属していて別の種類のものです。
あやめ科のものには、はなしょうぶのほか、あやめ、かきつばた、いちはつ、きしょうぶなどがあり、みな美しい花をつけます。
そのうちで最も豪華な花をみせてくれるのははなしょうぶです。花びらも大へん大きく、横にひろがりをもっています。
かきつばたといえば、江戸時代の画家尾形光琳がえがいたかきつばたがあります。
金びょうぶにえがかれたかきつばたの花の群青色[ぐんじょういろ]と葉の緑色は、すばらしい装飾的効果を生んでいます。