その悲願を果たしたものの、米作りは衰退する。消費は減り、価格は下がり、農家は高齢化が進んだ。働き者の土は全国で埼玉県とほぼ同じ広さが、耕作放棄で失業中だ。たまの田仕事で百姓気分の呑気さが、申し訳なくなる。
とはいえ、せっかくの新米である。炊くのは、鍋でも釜でも直火がいい。料理に比べて飯炊きは不当に軽んじられている、と言ったのは北大路魯山人だった。自分の料亭に来る料理人には、「君は飯が炊けるか」と一番に聞いたそうだ。
お節介ながら、炊きたての新米に豪華な総菜を並べてはいけない。主役はやはり一人がいい。ご飯は立派な料理である、と魯山人は言っている。瑞穂の国の歴史と文化の溶け込んだ一粒一粒は、さて、どんな味がする。