土は働き者だと、この季節になると思う。棚田保存の活動に加えてもらって、今年も新米がとれた。猫の額ほどの一枚ながら60キロも実らせた。収穫のすんだ田は、ひと仕事を終えて、秋日和に身を養うような風格を漂わせている。
今年も各地で、その地その地の土と水が稲を実らせた。近ごろの品種は名前も楽しい。北海道の「ゆめぴりか」、青森の「まっしぐら」、九州なら「にこまる」、岩手は「どんぴしゃり」・・・・・・。炊きたての艶と湯気を思えば、腹の虫が動き出す。
ご飯と日本人は切っても切れない。だが米食民族というより、「米食願民族」だったという人もいる。史上ずっと混ぜ飯を食べてきたからだ。誰もが白米を腹一杯食べられるようになったのは、昭和も30年代を待ってだった。