■花子の民事責任を追及できるか
では、太郎と月子は、花子に対して、民法第709条に基づいて不法行為責任を追及して、治療費や慰謝料等の損害賠償を求めることはできるであろうか? この点も、無理である。花子は、言うなれば何にもしていないのであり、太郎と月子に対して不法行為を行っていないからである。
では、花子が、(呪術を用いる等)自らの意思で生霊を現出させて、太郎と月子を襲った場合はどうであろうか? この場合も、太郎と月子の請求は認められないであろう。花子の行った呪術と太郎と月子の負った傷害との間に相当因果関係が認められないからである(現在の科学においては、呪術を行ったとしても、生霊が怨恨の相手方を襲うとは認められていない)。
なお、「花子が呪術を行ったことにより気分を害した」という理由での慰謝料請求は認められる余地はあろう)