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arisuferret
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"道徳は人間にとって最上のものではない。だが最も支配力をもっているものだ。人間にもっとも正しい命令権をもっているものは道徳である。道徳以上の人間はあり得る。 少なくとも道徳以上に生きている瞬間は人間には決して少なくない。 しかし多くの人間はまた道徳以下に生活している。だから人間は絶えず反省してみて、自分の不正なことを知る時は直すべきである。"
arisuferret
140 Characters / 2 Recordings / 1 Comments
"ある日余はエリスに出会い、その窮状を救ったことから彼女との交渉が生れたが、それがもとで免官され、折から報じられた母の死もあって、とうとうエリスと同棲することになった。こうして余は、つらいなかにも愛に包まれた楽しい月日を送ることになったが、それはまた学問のすさんでいく月日もあった。"
arisuferret
196 Characters / 2 Recordings / 3 Comments
"私は、人間の罪ということについて深く考え続け、死んだ気持ちで生きていこうと決心する。しかし、結局そのような苦悩に満ちた生活を続けていくことに堪えきれず、こうした苦しみから逃れようと、自殺を考えるようになる。この私の考えは、妻へも打ち明けることができず、いつも黒い影を背負っていた。そのうちに明治天皇が崩壊され、引き続けて乃木大将が殉死した。私は心に深い衝撃を受け、密かに自殺しようと覚悟する。"
arisuferret
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"人間は類人猿のようなものから変化して生まれたものかと思うが、最初の人間も既に画を書くことを知っていた。おそらく言葉を作り出すことを知り、歌も歌ったであろう。 子供は言葉を知らないうちから、踊ったり、歌ったりし、何かものを言おうとする。踊りは他の動物にもあると思うが、しかしそれは鳥が歌うと同じような本能的な踊りで、心の変化がその踊りには見られないと思う。 人間はお互いに意志の疎通をはかる熱意が他の動物よりずっと強く複雑だ。頭のできが違う。"
arisuferret
192 Characters / 4 Recordings / 0 Comments
"われらにとって肉体をいかすことは大事なことである。また、生活を楽しくすることも喜びである。 しかし生き甲斐を感じるのには、やはり強大な精神力を感じることができ、自分の精神力が目醒める時である。 人間の精神力はふつうは半睡の状態にある。その全力を発揮しない。ただあるときにその全力が目醒める、すると人間は生き甲斐を得るのである。 精神が振起されることで人間は生き甲斐を感じ得るのである。"
arisuferret
177 Characters / 2 Recordings / 6 Comments
"今朝、障子を開けたら庭は小雪が散らばっていた。また雪か、と思う。私は九州生まれのせいか知れない。 九州では雪が珍しく、私の老母など雪の日は窓を開けて「ええな、ええな」と見とれていたものだ。 ここをほんとは標準語の「いいな、いいな」と書くべきだろうが、私にはやはり熊本訛りのそのように聞こえることが、なんとも故郷の庭の雪景色をそのまま現してくれるのである。"
arisuferret
194 Characters / 3 Recordings / 2 Comments
"それにしても、私は冬の木々の美しさ、たくましさを誰にも告げたい。芽吹きの時も、また紅葉する時も良いのだが、もっとも力の充実して艶やかとも言いたいのは冬木たちである。 ことにも落葉樹はおのれの見事な枝ぶりを大空に示している。ケヤキの梢は丸で素晴らしいレースの模様のように小枝たちを群がらせ、それがまた決して侵しあいせめぎあう枝たちではなく、実に良き配分にて冬の青空を領しあっているのである。"
arisuferret
193 Characters / 2 Recordings / 0 Comments
"幸いなことに、そのとき店には電話がかかってきた。近眼の主人は愛想の悪い返事をしていたが、相手は何かしきりに勧誘しているらしく、おやじはなかなか電話を切れないでいた。それが終わるとまもなく、赤ん坊を背中に負ぶった母親が、問題集のことで何かくどくどと、交渉しに現れた。彼女も教育ママの一人であるらしかったが、彼女が帳場の前に立ちふさがっているお陰で私達は店の主人の視野に入らないでいられた。"