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arisuferret
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"今朝、障子を開けたら庭は小雪が散らばっていた。また雪か、と思う。私は九州生まれのせいか知れない。 九州では雪が珍しく、私の老母など雪の日は窓を開けて「ええな、ええな」と見とれていたものだ。 ここをほんとは標準語の「いいな、いいな」と書くべきだろうが、私にはやはり熊本訛りのそのように聞こえることが、なんとも故郷の庭の雪景色をそのまま現してくれるのである。"
arisuferret
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"それにしても、私は冬の木々の美しさ、たくましさを誰にも告げたい。芽吹きの時も、また紅葉する時も良いのだが、もっとも力の充実して艶やかとも言いたいのは冬木たちである。 ことにも落葉樹はおのれの見事な枝ぶりを大空に示している。ケヤキの梢は丸で素晴らしいレースの模様のように小枝たちを群がらせ、それがまた決して侵しあいせめぎあう枝たちではなく、実に良き配分にて冬の青空を領しあっているのである。"
arisuferret
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"幸いなことに、そのとき店には電話がかかってきた。近眼の主人は愛想の悪い返事をしていたが、相手は何かしきりに勧誘しているらしく、おやじはなかなか電話を切れないでいた。それが終わるとまもなく、赤ん坊を背中に負ぶった母親が、問題集のことで何かくどくどと、交渉しに現れた。彼女も教育ママの一人であるらしかったが、彼女が帳場の前に立ちふさがっているお陰で私達は店の主人の視野に入らないでいられた。"