半月が輝き、 つるんとした花崗岩の丸石を銀色に照らしている。静けさを破っているのは、 流れの遠い黒い川が立てるさざなみの音と、 向こうの森で木々がざわめく音だけ。暗がりのなかでなにかが動きだした。四方八方から、しなやかな黒い影がいくつも岩場にはい上がってくる。むき出したかぎ爪が月の光を浴びて光、あたりを警戒する目が琥珀のように輝めいた。つぎの瞬間、無言の合図でも出されたかのように、突然動物たちは互いに飛びかかった。取っ組みあってけたたましく鳴く猫たちで岩場がとたんに活気づく。毛とかぎ爪が舞う狂乱状態のまんなかで、がっしりしたこげ茶色のとら猫が赤褐色の雄猫を地面に押さえつけ、勝ち誇ったように頭を上げた。
「オークハート!」とら猫がうなった。「おれたちのなわばりで狩をするとはなにごとだ。ここサニングロックスはサンダー族のものだぞ!」
「いいやタイガークロー、夜が明けたらここもリヴァー族の狩場になるんだ!」赤褐色の雄猫が激しくいい返した。警告を発する長い鳴き声が川岸のほうからきこえてきた。 かん高い、 不安に満ちた鳴き声だ。
「気をつけろ!リヴァー族の戦士たちがどんどんやってくるぞ!」